6)生き残りも成功のうち
これは案外気づきにくいポイントですが、普段私たちが「成功」という言葉を口にする時、そこに「生きている」という前提があることを忘れてはなりません。
つまりその時、私たちは「いかに有利に生きるか」「いかに楽しく生きるか」を議論しているのであって、死んだら元も子もないということです。
話は少し極端な世界のそれになりますが、たとえば、メキシコやコロンビアのマフィアは、成功の条件をこのように考えているそうです。
「成功とは最後まで生き抜くことである」と。
彼らの稼ぐ額は半端ではありません。かつてパブロ・エスコバルが支配したコロンビアのメデジンカルテルは、当時のレートで1日の売り上げが約60億円、年間では2兆円を超えたと言われます。
つまり、お金は使い切れないぐらいある、ということです。けれども、対抗するカルテルとの戦いや、DEA(米国麻薬取締局)、あるいは国軍との争いで、24時間いつ死ぬかわからないような状況にあるわけです。
その裏には「生きていればお金はいつでも稼げる」、「けれども死んだらすべて終わり」という根本的な思想があります。
これは、普通の戦争や戦場も同じことで、そういった最中にあっては、やはり生き残ることが無二の成功と言えることでしょう。
第二次大戦中、旧日本軍が各地で玉砕戦法を取ったことは遺憾ですが、小野田少尉が所属していた陸軍中野学校出身者は、最後まで「生き残ること」が義務付けられていました。
つまり、ここでも「生き残る」ことが成功だというわけです。
その視点から今日の私たちの状況を見つめ直してみると、よほどの状況にない限り、すでにそうした世界でいうところの「成功」を収めていると言えるのです。
しかしそれは、いかなる形であれ、私たちの魂が身体というものに機能しているからで、それが離れてしまっては、「生きる」ことも「成功」ということも、全く意味のない議論になってしまいます。
